人手不足による倒産リスクが高まる中、多くの企業が悩みを抱えています。しかし、適切な対策を講じれば、この危機を乗り越えることは可能です。本記事では、社会保険労務士兼人手不足解消コンサルタントの視点から、助成金や補助金を活用した人材確保・定着戦略について解説します。人手不足倒産を回避し、企業の持続的成長を実現するためのヒントをご紹介します。
目次
1.人手不足倒産の現状と危険性
1-1. 人手不足倒産の定義と統計
1-2. 業種別の影響と対策の必要性
2. 助成金・補助金の種類と活用法
2-1. 人材確保に使える主な助成金
2-2. 人材育成・定着のための補助金
3. 効果的な人材採用戦略
3-1. 採用チャネルの多様化
3-2. 魅力的な求人票の作成テクニック
4. 従業員定着率向上のポイント
4-1. 働きやすい職場環境の整備
4-2. キャリアパスの明確化と教育制度
5. 人手不足解消コンサルタントの活用法
5-1. 専門家による現状分析と改善提案
5-2. 長期的な人材戦略の立案支援
詳細
人手不足倒産の現状と危険性
1-1. 人手不足倒産の定義と統計
人手不足倒産とは、必要な人材を確保できずに経営が立ち行かなくなり、事業継続が困難になる状態を指します。東京商工リサーチの調査によると、2023年の人手不足倒産は前年比20%増加し、特に中小企業への影響が顕著です。 2024年は1~8月末までの集計で235件と昨年の件数を上回る勢いです。
各 年 | 人手不足倒産件数 | 1~6月集計倒産件数 |
2022年 | 140 | 61 |
2023年 | 260 | 110 |
2024年(1~8月) | 235 | 182 |
1-2. 業種別の影響と対策の必要性
建設業、介護・福祉業、運輸業など、特定の業種で人手不足の影響が深刻化しています。これらの業界では、早急な対策が求められており、助成金や補助金を活用した人材確保・育成が効果的です。
2. 助成金・補助金の種類と活用法
2-1. 人材確保に使える主な助成金
キャリアアップ助成金や働き方改革推進支援助成金など、人材採用や定着に活用でき る助成金制度があります。これらを上手く利用することで、採用コストを抑えつつ、必 要な人材を確保、または定着できる可能性が高まります。
助成金名 | 対象 | 概要 | 助成額 | 適用範囲 |
雇用調整助成金 | 非正規社員の正社員化や処遇改善を図る企業 | 非正規雇用労働者の正社員化や賃金規定等を3%以上増額改定等を実施した場合に支給される助成金 | 正社員化の場合、1名あたり最大80万円 | 全国 |
キャリアアップ助成金 | 経済上の理由で事業活動の縮小を余儀なくされ、従業員の雇用維持を図る企業 | 休業・教育訓練・出向等を行う際の賃金補填や加算金支給 | 賃金の一部を助成(中小企業は助成率が高い) | 全国 |
働き方改革推進支援助成金 | 働き方改革を推進するための職場環境整備を行う中小企業 | 労働時間短縮や年休取得促進のための設備導入やシステム導入に対して支給 | 各目標合計最大730万円 | 全国 |
人材開発支援助成金 (人材育成コース) | 職務に関連した専門的な知識及び技能の習得をさせるための職業訓練等を計画に沿って実施した雇用保険適用の中小事業主 | 職業訓練や資格取得支援のために支給される助成金 | 訓練内容に応じて費用の一部を助成 最大50万円 | 全国 |
両立支援助成金 (育児休業支援コース) | 育児休業を取得した従業員の職場復帰を支援する企業 | 育休復帰支援プラン作成及びプランに沿った円滑な育休及び復帰を果たした中小事業主に支給 | 1人あたり最大60万円 | 全国 |
厚生労働省HP参照:雇用関係助成金パンフレット|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
2-2. 人材育成・定着のための補助金
各都道府県ごとに出されている補助金等などを活用し、従業員のスキルアップや働き やすい環境づくりを支援することができます。これらの制度を利用することで、人材 の定着率向上にもつながります。ここで代表的な3都府県の補助金を取り上げます。
補助金名 | 対象 | 概要 | 助成額 | 適用範囲 |
魅力ある職場づくり推奨奨励金 | 都内中小企業等の職場環境の改善や人材育成等を実施している事業所 | 賃金引上げ、エンゲージメント向上、結婚等ライフステージ支援 | 最大30万円~60万円(各取組毎の上限) | 東京都 |
大阪府介護ロボット導入支援事業補助金 | 介護保険法による指定を受け、大阪府内で介護サービスを提供しており、「介護ロボット・ICT活用支援セミナー」を受講している事業所 | 介護ロボットの購入・リース費用に対する補助 | 最大1000万円 | 大阪府 |
中小企業生産性向上促進事業費補助金 | 県内に事業所を有する中小企業 | 生産性向上や業務プロセスの改善、人手不足解消に資する設備の導入等 | 最大500万円 | 神奈川県 |
各都道府県のHP参照
3. 効果的な人材採用戦略
3-1. 採用チャネルの多様化
従来の求人サイトやハローワークだけでなく、SNSや従業員紹介プログラム、地域 イベントなど、多様な採用チャネルを活用することが重要です。ターゲットとなる人 材層に合わせた採用戦略を立てましょう。
3-2. 魅力的な求人票の作成テクニック
求職者の目を引く求人票作成のポイントとして、具体的な仕事内容、成長機会、福 利厚生の充実度などを明確に記載することが挙げられます。また、企業の理念や将来 ビジョンを伝えることで、応募者の共感を得やすくなります。
4. 従業員定着率向上のポイント
4-1. 働きやすい職場環境の整備
フレックスタイム制やリモートワークなど、柔軟な働き方の導入が定着率向上に効 果的です。また、メンタルヘルスケアや休暇取得促進など、従業員のワークライフバ ランスを支援する取り組みも重要です。
4-2. キャリアパスの明確化と教育制度
従業員の将来像を明確にし、それに向けた教育・研修制度を整備することで、モチ ベーション向上と定着率アップにつながります。社内外の研修機会や資格取得支援な ど、具体的な成長支援策を提示しましょう。
5. 専門家の活用法
5-1. 専門家による現状分析と改善提案
コンサルタントは、企業の現状を客観的に分析し、効果的な改善策を提案します。採 用から定着まで、一貫した人材戦略の立案をサポートすることで、長期的な人材確保・ 育成に貢献します。
5-2. 長期的な人材戦略の立案支援
人口減少社会を見据えた長期的な人材戦略の立案が重要です。AI・IoTの活用による 業務効率化や、シニア・外国人材の活用など、多角的な視点からの戦略立案をサポート します。
まとめ
人手不足倒産を回避するには、助成金・補助金の活用が効果的です。効率的な採用戦略の実施や、働きやすい環境づくり、明確なキャリアパスの提示で、人材の確保・定着を実現しましょう。今後は、AI・IoT活用による業務効率化や、多様な人材の活用がさらに重要になります。専門家のサポートを受けながら、長期的な人材戦略を立てることで、持続可能な経営が可能になります。
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