採用のミスマッチは、企業にとって大きなリスクとなります。特にモンスター社員となり得る候補者を採用してしまうと、組織全体に深刻な影響を及ぼす可能性があります。社会保険労務士として多くの企業の採用支援に携わってきた経験から、採用面接での効果的な見極めポイントと具体的な確認手法をご紹介します。
目次
面接前の準備と確認事項 ・
1-1 履歴書・職務経歴書の精査ポイント
1-2 レファレンスチェックの方法
面接時の効果的な質問技法
2-1 状況別質問例
2-2 要注意な回答パターン
非言語コミュニケーションの観察
3-1 態度や振る舞いのチェックポイント
3-2 グループ面接での評価ポイント
実践的な評価手法
4-1 ロールプレイングの活用
4-2 適性検査の活用
採用判断と入社後のフォロー
5-1 評価基準の設定
5-2 試用期間中の観察ポイント
面接前の準備と確認事項
1-1 履歴書・職務経歴書の精査ポイント
以下のような注意点を踏まえて、精査をすることで面接時の質問項目も明確になり ます。
・頻繁な転職歴の理由確認
・空白期間の説明の整合性
・前職での役職と実績の妥当性
・志望動機の論理性
1-2 リファレンスチェックの方法
リファレンスチェックとは、面接や職務経歴書などで応募者が回答した内容に虚偽 がないか、過大な自己表現になっていないか、「上司・同僚・部下」などとのコミュ ニケーション・業務への取り組む姿勢や業務成果などを前職の関係者へ聞き取りを行 う調査の事で、面接で知りえた情報の確認作業です。それにより、より正確な応募者 の業務実績や人物像を把握し、採用審査を進めることができます。具体的には下記の ような方法で情報を取得しますが、リファレンスチェックには注意するべき項目があ ります。
導入される方は、HPの無料ダウンロード「リファレンス採用注意事項」をダウン ロードして確認してください。
・前職の人事部門や直属の上司・同僚・部下への聴き取り
・紹介会社経由での情報収集
・SNSでの発信情報の確認
・学校関係者への照会(新卒の場合)
面接時の効果的な質問技法
2-1 状況別質問例
・「困難な状況をどう乗り越えたか」
・「上司との意見の相違にどう対応したか」
・「チーム内での衝突をどう解決したか」
・「失敗した経験とその後の対応」
クローズドエンドではなくオープンエンドな質問をすることで、コミュニケーショ ン能力の確認ができ、2週間程度経過した後に2次面接時に「もう一度同じ質問をし、 1次面接で答えた内容の説明をしてください」などと要望することで、以前の回答と の整合性確認が取れます。
2-2 要注意な回答パターン
・前職や前任者への一方的な批判
・自己責任の回避傾向
・極端な自己主張
・曖昧で具体性に欠ける説明
この様な回答をされる方であれば、自己肯定感が多く俯瞰して自己を見れていない 可能性が高くなります。このような方は、ミスなどは他人の責任、成功は自身の行動 によるといった解釈になり、上司等の指摘も受け付けなくなる可能性が高くなりま す。また、詳細に説明を求めると、成果までのプロセスに整合性が取れなくなり、あ いまいな説明で切り上げる可能性も出てきます。要注意な回答パターンは会社ごとに 積み上げていき、会社の財産として活用していきましょう。
非言語コミュニケーションの観察
3-1 態度や振る舞いのチェックポイント
・視線の配り方
・話し方のトーン
・質問への反応
・座り方や姿勢
モンスター社員となる方は様々なタイプに分かれます。
「自己中心型」・「規律不順守型」・「攻撃型」・「被害妄想型」・「メンタル不調型」
例えば「攻撃型」の場合...
<視線の配り方>
複数面接官がいる場合、権限が強そうな面接官にのみ視線を集中させ、他の面接官 を軽視する傾向がみられます。
<話し方のトーン>
基本的には終始丁寧な話し方を維持しますが、以下のような場面で微細な変化が現 れます。
・自身の実績を語る際にトーンが強くなる
・前職の職場環境について聞かれた際に、一瞬声が硬くなる
・反論する際に、わずかに早口になる
<質問への反応>
表面上は礼儀正しく対応しますが、以下のような場面で本質が垣間見えることがあ ります。
・掘り下げ質問への若干の苛立ちが表情に出る
・自身の弱みを問われた際の一瞬の沈黙
・説明を遮られた際の微細な表情の変化
「自己中心型」の場合では...
<視線の配り方>
表面上は適切に視線を配りますが、以下のような特徴が現れます。
・自身の意見を述べる際に、無意識に顎が上がる
・相手の反応を確認するような視線の動きが少ない
・褒められた際に、目の輝きが変わる
<話し方のトーン >
・自己PRの際に、わずかに声量が大きくなる
・成功体験を語る際に、抑揚が強くなる
・他者との協働について聞かれた際に、わずかにトーンが下がる
この様にそれぞれの型によって、特徴が異なります。社内にモンスター社員がいる 場合には、その特徴をよく観察しておくと良いでしょう。
3-2 グループ面接での評価ポイント
・他の応募者との関わり方
・議論への参加態度
・リーダーシップの取り方
・協調性の有無
この項目でも、それぞれの型によって現れる特徴は変わりますが、「議論への参加 態度」という場面では、攻撃型や自己中心型であれば積極的に話を進めますが、自身 と違う意見が出た際には明らかに態度が変わるのが分かります。また、メンタル不調 型と被害妄想型では、ほとんど議論に参加しないという特徴が垣間見えます。
実践的な評価手法
4-1 ロールプレイングの活用
・クレーム対応シミュレーション
・チーム作業の模擬体験
・ストレス状況下での対応確認
・部下指導のシミュレーション
クレーム対応シミュレーションでは、攻撃型や自己中心型であれば自身に非がない 前提で話を進める傾向がありますが、被害妄想型やメンタル不調型であればシミュレ ーションに必要以上のストレスを感じているのが分るでしょう。
4-2 適性検査の活用
・性格診断テストの活用
・ストレス耐性テストの実施方法
・コミュニケーション能力テスト
・論理的思考力の確認方法
各種適性検査が簡単に導入できるようになっています。その中でもおススメは、ダ ークトライアド検査です。この検査は、「マキャベリズム(目的のためなら手段をえ 選ばない)」・「ナルシズム(自分大好き)」・「サイコパシー(共感性が低い)」という3 つの指標を検査します。この検査数値が「ベンチマーク」よりも高ければ、ダークト ライアド度が高いという事になり、要注意という事です。こちらも「無料ダウンロー ド」でダウンロードできます。ご使用になりたい方はダウンロードしてください。
採用判断と入社後のフォロー
5-1 評価基準の設定
・必須スキルの評価方法
・価値観の適合性確認
・組織文化との適合性
・成長可能性の判断基準
面接評価では、上記4つを考慮して項目設定してください。一番重要なことは、価 値観の適合性と組織文化との適合性です。今いる従業員と合わない人を入れることだ けは避けてください。
5-2 試用期間中の観察ポイント
・同僚との関係構築状況
・業務への取り組み姿勢
・指導への反応
・規則順守の状況
観察ポイントから、モンスター社員の傾向が見えた場合には、3-1で上げたタイプ に分類して、対応を決定してください。
【実務上の具体的なアドバイス】
・面接は複数回実施し、異なる面接官による評価を組み合わせる
・履歴書の内容について、具体的なエピソードを掘り下げて確認
・レファレンスチェックは可能な限り実施する
・言動の一貫性を複数の質問で確認する ・試用期間中は特に慎重な観察を行う
【注意点】
・質問内容が差別的にならないよう注意
・個人情報の取り扱いに十分配慮
・主観的な印象だけでなく、客観的な評価基準を設ける
・採用基準を明確に文書化しておく
まとめ
このような綿密な採用プロセスを実施することで、モンスター社員となりうる候補者を事前に見極めることが可能となります。ただし、完璧な見極めは困難であるため、採用後のフォローアップ体制も併せて整備することが重要です。
もし、現在モンスター社員の対応に苦慮されておられる場合には、お近くの社会保険労務士にご相談ください。もちろん、当社でもお受けいたします。お気軽にご連絡ください。
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